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中村てつじ「日本再構築」ブログ
最終更新時刻
2019/11/21 00:47
作成
Array
サイトURL
http://tezj.hatenablog.jp/
アベノミクス第二幕
もうあまり時間は残されていません。気づいている人は多くないと思います。あと7ヶ月です。
アベノミクス第二幕が始まります。
私の分析では、最短で来年の6月頃です。この7年間とは質の違う、大規模な経済政策です。今までは布石でした。
この予想が外れてくれることを私は願っています。
早く、野党が団結をして、安倍政権に先んじて、経済政策を打ち出してくれることを望んでいます。その思いを込めて、この原稿をブログに載せます。いま書いている原稿が第五章第四節まで来ました。その部分だけをまずお伝えします。
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第五章第四節 本当の解決策 国債の発行と財政の拡大
ここまで述べてきたように、黒田総裁の7年間の方針は、徹底的な金融緩和をしても、日本の経済は再生しないという結論を実証するための実験だった。このような実験は、綿密な分析を行ってきた三人、つまり、安倍晋三総理大臣、麻生太郎財務大臣兼金融担当大臣、黒田東彦日本銀行総裁の三人が揃わなければできなかった。
次にこの三人が狙うのは何か。
異次元緩和の次の段階、そう、異次元の「財政の拡大」である。
時期はいつか。
ここで、消費税の増税時期が重要になる。2019年10月に消費税は8%から10%に上げられた。財務省としては、2010年の菅政権から9年越しで狙ってきた消費税増税が完成した瞬間である。それでは、9年前にはどのような議論があったか。リーマンショック級の経済の不調があれば、消費税の増税を行わないという「景気条項」という条文があった。
今回行われた8%から10%への消費税増税は、当初、2015年10月の予定だった。
・2014年11月に、2017年4月へ1年半延期
・2016年6月に、2019年10月に2年半延期
という形で2回に渡り、計4年間も延長されてきたわけである。
その背景には、「アベノミクス」と称して経済政策を重視してきた安倍政権が、消費税増税の悪い影響を懸念して、先延ばしにしてきたことが理由である。
今回、三回目の延長をしなかったのは、これを機会に、次の段階に入ろうとしているのだと私は分析する。
異次元緩和をしても経済が再生できなかった場合、どのような状況が整えば、国債の追加発行と財政の拡大ができるだろうか。
よく考えてみれば、財務省の言うとおりに増税をして、景気が悪くなったときである。つまり、経済対策が切れて、悪い影響が出始めたときに、次の段階に入ることが政治的に許される。
そうすると、その時期は、消費税の経済対策が切れる2020年6月以降だ。悪い影響が明らかに現れる、東京オリンピックが終わった2020年秋は、最大の機会になる。
安倍政権は、経済対策という錦の御旗を得て、第二次安倍政権成立直後の2013年1月に10兆円の補正予算を組んだように、多額の補正予算を組み、自民党・公明党を支持する利権団体への露骨な利益誘導を行う。
また、野党の息の根を止めるために、保育園の無償化だけでなく保育士の給料を増やす政策、介護人材不足を埋めるための介護士の給料を増やす政策、若い世代からの支持を確固とするために大学の無償化(約3兆円)と若い世代への月額数万円の手当の給付(月2万円ならば約3.6兆円)を行う政策を実行する可能性もある。
国土強靱化の予算として更に5兆円としても、15兆円の補正予算を組めば十分だ。
その時に総選挙を行うかもしれない。
そして、次の年からも、物価がインフレ目標の2%まで上がらなければ、一年ごとに右で述べたような政策を補正予算で実行していく。その頃までには、国債が国家の借金というよりは、日本銀行当座預金=銀行の「普通預金」、国債=銀行の「定期預金」という理解が進むだろう。このようなプロセスを通じて、財政の拡大が恒常化していく。
そうすると、補正予算ではなくて、本予算で財政が拡大されるようになる。
この経済・財政の構造変化を完成させることができれば、安倍政権は更に長期の任期を得ることができる。私の感覚では、自民党総裁任期は2021年から始まる4期目どころか5期目・6期目も見えてくる。
そうすると、2030年まで安倍政権が続く可能性がある。
野党には、いま、政治的に危機的な状況にあることを認識していただく必要がある。
-----
私が書く本なんて必要ないような社会になって欲しい。
そう思います。
(2019/11/21 00:49)
止揚の議論が必要 リフレ派とMMT
私はリフレ派でもMMTでもありませんが、
両者がともに「反緊縮」で「消費税増税反対」にもかかわらず、
「反緊縮」同士で内輪もめしているのがとても残念です。
両者の議論は、いま、止揚(しよう)が必要です。
具体的に言いましょう。
デフレの状態なので、
リフレ派の経済政策が限界があるのは自明のことです。
いくら金融緩和をしても、マネーストックは増えません。
ちなみに、私はリフレ派に対して、
今の状況ではいくら金融緩和をしてもマネーストックは増えないので、
物価は上がりませんよと2013年の黒田総裁登場から申しておりましたが、
その声は聞いてもらえませんでした。
6年経って、リフレ政策の効果がでないことが実証されました。
そこで、今度はMMTの登場です。
私のことをMMTerと表してくださる方も出てきました。
そういう評価はうれしさ反面、
MMTerが鬼の首を取ったような表現をされているのにも、
私はちょっとちがうかな、という気持ちを持っています。
私がそう思う理由を端的に言えば、
インフレ期には金融政策が必要、
デフレ期には財政政策が必要、
ということです。
今の経済情勢でMMTの方が情勢がいいのは、
単に、今がデフレ期に居るからです。
もっとも、リフレ派の政策ではいつまで経ってもデフレから脱却できないので、
リフレ派に対するMMTの批判は的を射てるのでとてもリフレ派は痛いです。
しかし、MMTはMMTで金融政策を全面否定しています。
例えば、国債を否定しているのですが、
国債はインフレ期には絶大な信用収縮の機能を発揮します。
インフレ期には、財政政策だけでなく、
財政政策と金融政策を組み合わせる方が効果的なのは、
1+1=2みたいな話なので、誰もが理解できるはずです。
この点をMMTは純粋な理論的美しさを取ろうとするのですが、
残念ながら、インフレ局面においては、
弊害を取る手段は一つでも多い方がいいです。
そういう意味では、
両方の立場は、相反するものではなく、
状況によって使い分けなくてはいけないものだと言えます。
両方の立場を止揚(しよう)する議論が今こそ必要です。
こういう話をどこかで解説したいと思います。
(2019/11/18 00:17)
オスプレイは佐賀空港にやってくるか?!
政府は佐賀空港に自衛隊のオスプレイを配備したいと表明しています。
一昨日、佐賀県が一定の見解を表明しました。オスプレイ計画を一定評価 県、論点整理素案を公表「漁協理解なければ困難」(佐賀新聞 2017年05月31日)
http://www.saga-s.co.jp/column/osprey/21601/433901私もよく賛成か反対かを訪ねられます。
昨年の参院選の時から、私は賛成や反対を言う以前の問題だと申しております。政府はオスプレイを島嶼防衛に使用すると言っています。しかし、制空権が自国にある場合には、オスプレイでの輸送は必要ないですし、制空権を他国に握られている場合には、オスプレイは撃ち落とされます。一機200億円のオスプレイをなぜ買わなくてはならないのでしょうか。
私には、よく理解できません。
防衛上の必要性はありません。
それよりも、戦闘機であるF35を早期に整備した方がいいと思います。つまり、オスプレイを買う本当の目的は、アメリカから武器を買うことそのものにあるのだと思います。また、アメリカ側にとっては自衛隊のオスプレイ配備はアメリカの国益にプラスになるという面もあります。改正された日米防衛協力の指針、いわゆるガイドラインでは、日本の自衛隊はアメリカ軍と一体となって行動することになりました。佐賀空港に自衛隊のオスプレイが配備されると、アメリカが佐賀空港を使いたいということになった場合、日本側が拒めるような約束はありません。佐賀新聞も解説で今回行われた県の評価が「計画受け入れの議論を促す可能性もある」と述べています。
http://www.saga-s.co.jp/news/saga/10101/433900
一人の県民として、私ももう少し突っ込んだ分析が欲しいと感じました。
(2017/06/12 16:47)
2017中村てつじサポーターへの御協力感謝
2017中村てつじサポーターへの御協力をいただき、ありがとうございました。
無事に目標数を達成することができました。感謝を申し上げます。
引き続き、御支援を賜りますよう、お願い申し上げます。
(2017/06/12 16:47)
第23回「個人消費を増やす方法」若年層への住宅手当創設を
住宅産業新聞 連載「住宅産業が日本経済を救う」
2017年(平成29年)5月25日(木曜日)号
第23回「個人消費を増やす方法」 若年層への住宅手当創設を
【若年層への住宅手当】
前号の感想をいただいた。個人消費が増えると景気が良くなるとして、次にどうやったら個人消費を増やすことができるのだろうかという質問をいただいた。前向きの質問をいただいて、とても嬉しかった。そこで今号からはどうすれば個人消費が増えるのか、具体的な政策を示していきたい。
日本経済の6割は個人消費が占めている。個人消費を増やせば、お金の流れ方はプラスに変わる。また、個人消費が伸びていけば設備投資も増えていくので、個人消費の伸びは経済全体を引っ張る。
そこで、第一に最大の政策として実行すべきは、若年層への住宅手当である。18歳から30歳までの若年層に、例えば月2万円、年24万円を給付する。人口統計によれば、対象になるのは1500万人、必要予算額は3.6兆円になる。財源不足を心配する人もいるかもしれない。
しかし、その心配は全くない。
前回述べたように、黒田東彦日銀総裁が2013年に就任して4年間の間に、黒田総裁は日本銀行が発行しているお金の総量「マネタリーベース」を134兆円から436兆円へと302兆円も増やした。4年間で3.25倍である。しかし、日銀が笛を吹いても銀行は踊らなかった。収益率が高くない企業には銀行はそもそも貸せないのである。
その結果、銀行貸し出しは思ったようには増えず、民間に流通するお金の総量「マネーストック(M3)」は1141兆円から1286兆円へと145兆円しか増えていない。日銀がマネタリーベースを増やした量の48%にすぎない。
もっとも、見方を変えれば、この4年で年間平均36.5兆円、年率平均3%以上も民間へのマネーの供給が増えたとも言えるが、このかなりの部分は新規国債の発行とそれに伴う国家財政の支出増によりもたらされている。また、この程度しか増えないのであれば増えた分のマネーは投資家や企業の内部留保に吸い上げられるだけで、一般国民にまでは届かない。その結果、一般国民の消費は増えず、物価上昇率は2%どころか1%も上昇していない。
この点、一般国民の消費を増やすためには、投資家や企業の内部留保に吸い上げられているお金を徴税によって取り戻し、一般国民に再分配すべきという主張がある。私はその論を否定するものではないが、経済的に力を持っている富裕層や大手企業を狙い撃ちするわけなので、実際には大きな抵抗が予想される。経済へのマイナスの影響が強いと彼らは反論し、マスコミも動かすだろう。実現するには相当の大きな支持が一般国民からなければ難しい。
それならば、もう一つの方法を考えてみよう。再分配は、吸い上げられている構造について一般国民が十分に理解をしてからでも遅くはない。
もう一つの方法とは、マネーの供給面に目を向ける方法である。経済規模に対してマネーが十分には増えていない日本経済では、現状、マネーが年率3%増えても物価上昇率は0%を少し上回る程度である。この物価上昇率を1%~2%に上げるためには、毎年増えるマネーの量を倍増させなければならない。つまり、貸し出しが思ったように増えない現状では、マネーの供給を増やす方法は、財政を拡張させて国債をより多く発行するしか方法がない。
現状の倍のマネーを供給するためには、近年の国債発行量に加えて年間平均36.5兆円の国債を追加して発行しなくてはならないという仮説になる。もっとも、実際には、国債を現状よりも多く発行して経済対策をすれば、景気が良くなり、設備投資の需要も増え、銀行の貸し出しが増えるだろう。その分を仮に半分と見積もっても、年間18兆円程度は今までよりも多く国債を発行しても問題がない。インフレが起きれば、金融政策によりマネーを回収するとともに、その時点で財政を緊縮させれば良いだけである。
そのため、若年層への住宅手当のためにわずか3.6兆円の国債を追加して発行してもデフレ脱却にプラスになることはあっても、経済や子どもたちの将来にマイナスに作用することはない。
【若年層住宅手当の効果】
もし、2万円の住宅手当が実現できればどうなるだろうか。
対象は、全ての若年層だ。社会人でも学生でも、どんな職業に就いていても区別されずに給付される。特に重要なのは、定職に就いていない若年層にも給付を行うという点である。人口統計を見れば、今の43歳、202万人をピークにして親になりうる世代の人口は減り続ける。いま29歳は135万人、18歳は123万人である。これから、この年齢層が結婚して子どもを持つ世代になる。
日本社会の一番の弱点は人口減だ。それも、これから親になる年齢層の人口が減っていく我が国においては、この年代層に経済的な理由によって恋愛もできない、結婚もできないという状況を打破しなければならない。そのための経済政策が必要だ。
ローコスト住宅を作っている工務店の社長から、低所得のために住宅ローンが組めない、いわゆるローンアウトのカップルがかわいそうだというお話を伺った。けっきょく、このようなカップルは低品質の賃貸住宅に住まざるを得ず、社会の格差はどんどん開いていくと憤っておられた。
2万円の住宅手当はカップル二人で4万円になる。前回までの連載で述べたように住宅ローンの金利はこれからも上がらない。昔に比べて、いま生産される住宅は、耐震においても断熱においても非常に性能が上がっている。4万円のかさ上げで、いまローンアウトで賃貸にしか住めない20代のカップルが、住宅ローンを組んで家を建て、快適なすまいに住めるようになる。そうなれば、結婚する若者も増え、子どもも増えていく。子どもは一番消費をする年齢層なので、経済はプラスに向かう。
いまローンアウトで困っているようなカップルに住宅ローンを組ませることは倫理的に問題だと指摘する声はあるかもしれない。しかし、問題は中古住宅の流通のしくみを変えることで解決できる。いま作られる住宅は、住宅履歴やインスペクションや瑕疵保険など、少し工夫をすれば中古として流通する経済的価値が非常に高くなる。賃貸でも売買でも、高い経済的価値を維持できるようになる。
いまの賃貸住宅市場で注目すべきは、一戸建ての高性能賃貸住宅が不足している点である。家族が増えた時にもう少し広い家に住みたいと思うようになって、一戸建ての賃貸を求めようとしても全く足りていない。必要な需要に供給が追いついていない現状だ。あっても、築30年といったような古くて住みにくいものばかりである。
カップルで月4万円の住宅手当があれば、一番大変なローン初期の支払いを乗り越えることができる。だから、そもそも住宅ローンが払えないという状況そのものが起こりにくい。たとえ住宅ローンが払えないという状況が起こったとしても、問題は起こらない。築浅の一戸建て住宅は賃貸物件としても人気の物件になるので、確実な利回りが期待でき投資家からのニーズは高くなる。つまり、若いカップルが住宅ローンの支払いをできなくなって建てた家を手放すことになっても、残ローンは少ない、むしろ、多少なりともお金が戻ってくるという状況になる。
20代が良質な家に住むようになると、全世代に対して良い影響が伝わって行く。まず住宅関係の産業には需要が増え、全世代、全業種で仕事が増えるという好循環が生まれる。特に、職人の高齢化が問題になっている住宅産業にとっては、賃金・工賃が確保できる状況になる。もっとも職人の育成については特別の対策が必要ではあるが、工賃が下がらない、むしろ上がっていくという現象が生まれてくるため、職人をめざす人たちも増やしていける。
戸建ての家に住めるようになれば、子どもたちの学習環境も良くなる。21世紀の国家は人材を育成して世界と対峙していかなくてはならない。いかにして人材の底上げと高度人材の育成を実現するのかに尽きる。住宅手当はこの点でも国益にかなう。
このように、住宅手当の支給は日本の経済問題を全ての分野で大きく改善する方法になる。次回以降は、個人消費を増やして行くその他の方法について述べることにしよう。
(2017/06/12 17:29)
第22回「住宅ローン金利の行方」物価上昇率超えぬ水準で
住宅産業新聞 連載「住宅産業が日本経済を救う」
2017年(平成29年)4月27日(木曜日)号
第22回「住宅ローン金利の行方」物価上昇率超えぬ水準で
【金融政策と連動】
住宅ローンの金利は日本銀行の金融政策により影響をうける。特に「固定金利」の住宅ローンは「長期金利」と呼ばれる償還まで10年の国債の金利と連動している。住宅ローンについては第17回で触れたが、今回は金利そのもののしくみに焦点を当てて住宅ローン金利の見通しを論じてみたい。
黒田東彦日銀総裁になって丸4年が経ち、日本銀行が発行するお金の総量「マネタリーベース」は134兆円から436兆円へと302兆円増えた。しかし、民間に流通するお金の総量「マネーストック(M3)」は1141兆円から1286兆円へと145兆円しか増えていない。経済学の通説では日銀が発行するお金を増やすとそれを元手にして銀行がお金を作り出し、日銀が増やしたお金の数倍の量のお金が民間に流れるという説明がされてきた。しかし、現実には日銀が発行したお金は銀行で止まり、半分も民間には流れていない。
通説も見直しを迫られている。このような場合にはまず基本に戻ろう。金利はどのように決まるのか。
【金利の理論値】
仮に1年後に返してもらう場合に何%の利息をつけて貸せば損をしないだろうか。この点、金利の理論値は予想インフレ率+信用リスクで決まると言われている。予想インフレ率とは、今後の物価上昇率のみこみである。
仮に、これから1年間で物価が2%上昇するとみこまれる場合を考えてみよう。貸す側は少なくとも2%の利息は欲しいと考えるだろう。なぜならば、利息が2%なければ人にお金を貸すよりも、いま物を買う方が得だからである。いまでも1年後でも同じ価値の物が買えるには2%の利息をもらわなければ同じにならない。だから、物価上昇率のみこみは金利を決める第一の基準になる。
次に、借り手の信用リスクが加わる。AさんとBさんではお金を返してもらえる可能性は違う。だから、AさんとBさんとでは借りる時の利息も違ってくる。但し、政府が自国通貨建てで借りる場合には返せないことはあり得ない。信用リスクはゼロとして計算される。
以上から、国債の場合、金利の理論値は予想インフレ率と等しくなる。
【金融政策で決まる金利】
しかし、実際には、国債の市場金利は、日本銀行の金融政策に引きずられて理論値からズレる。もし、物価上昇率2%を中長期的に達成できると市場が判断すれば、金利も2%以上になるはずである。しかし、今は日本銀行の金融政策により、国債の金利はゼロ%辺りに誘導されていて、物価上昇率との関係は切り離されている。むしろ物価上昇率が2%になるまで金利は低い水準にとどめると日銀は約束している。
なぜ、日銀が金利を低めに誘導しているのかといえば、金利を低めにすることによって消費や投資を増やそうとしているからである。
まず消費について見てみよう。物価上昇率が1%ぐらいと予想できる場合には、ゼロ%辺りの国債や預金でお金を運用して1年後に物を買うよりも、いま買う方が実質的に安く買える。だから日銀が金利を抑えることで社会全体の消費が増え、需給バランスも需要が増える方向に向かう。そのことで、さらに物価が上昇するという流れに誘導しようというのが日銀の狙いである。
次に投資について見てみよう。消費が増え、物価が上昇していく局面では、早めの投資を行えば、消費が増えることに合わせて供給を増やし企業収益を増やすことができる。金利が下がれば投資にも踏み切りやすくなる。このように、金利が低くなれば投資は増えるという考え方がとられている。
【欠けていた視点】
しかし、実際には日銀が狙った通りにはなっていない。金利がいくら下がっても賃金が増えていないため消費が増えないからである。自分は物を買わないし物価も上がらないと実感している人を基準にすれば、予想インフレ率は上がらない。また人為的に金利が下げられると利息収入はむしろ減る。可処分所得が増えない中で、物価だけが上昇すると消費は伸びるどころか停滞する。だからデフレ基調から抜け出せない。
また、金利が下がれば投資が増えるという仮定も、あくまでも消費が増えていることが前提になる。消費が増えるという見通しがつかなければ投資をしても回収できない。
つまり、消費を増やす政策を打たなければいくら金融緩和をしても効果はない。日銀の佐藤健裕審議委員が米国エール大学での講演で「労働市場改革が重要」「金融政策単独での効果に限界がある」(3月29日日経新聞電子版)と述べているのは、予想インフレ率を上げるためには賃金を上げて消費を増やすことが必要だと認めているからに他ならない。
それならば、どうすれば賃金は上がるのか。
いま地域の経営者から聞く声は、人材不足だという声だ。労働力は逼迫している。市場原理によれば賃金は上がるはずである。しかし、現実には上がらない。それは、企業収益が上がらないからだ。貸し渋りを経験した日本の企業は内部留保を厚くしなければ企業を存続できないと考えている。つまり、中小企業の収益がさらに上がらない限り、日本の労働市場では賃金は上がらない構造になっている。
だからこそ、まずは企業収益を上げる必要があり、それには消費を増やす必要があり、それには可処分所得を増やす必要がある。可処分所得を増やす方法として先に賃金を上げる方法がとれない以上、国民の負担を減らし国民が自由に使えるお金を増やすこと、つまり、社会保険料の軽減や消費税の減税が必要不可欠の経済政策になる。これが論理的な帰結だ。
【金利は上がるのか】
黒田総裁の立場に否定的な学者の中からは、そのうち長期金利は上がらざるをえないという見方も示されている。現在日銀は年間80兆円規模で国債を買っているが、もう間もなく市場に国債が出回らなくなり人為的に下げている長期金利も上がって来るという主張である。
しかし、理論的に考えれば、そう簡単には金利は上がらない。市場に国債が出回っていなければいないほど、少し国債を買増しするだけで国債の価格は上がる。つまり、国債の金利を下げることができる。日本銀行ならば原資となる日本円はいくらでも発行することができる。このように、市場から国債がなくなるので金利が上がるという主張には根拠がない。
さらに言えば、今までは日銀当座預金に利息が付いているから銀行は日銀に国債を売ってきた。前回述べたように、銀行にとって国債は私たち民間人の定期預金のようなもので、できれば利息のつかない日銀当座預金よりも国債を持ちたい。現状では日銀当座預金のうち210兆円にはプラス0・1%の金利がつけられていて、日銀当座預金にお金を預けていても銀行は損をしない。仮に国債の価格が暴落=金利が上昇するような局面になった場合には、日本銀行は自ら国債を買い増す他に、日銀当座預金につけている金利をゼロにすればよい。銀行は日銀当座預金を手放すために国債を買い、速やかに国債市場から国債はなくなり市場金利は下がる。
【出口はどこにあるか】
これまで述べてきたように、住宅ローン金利が今のような史上最低レベルの水準から抜け出して行くには、日銀が利上げに転じる物価上昇率2%を達成することが最低条件になる。しかし、日本銀行は昨年11月に物価上昇率2%の達成時期を2018年度ごろとした。5回目の延期だった。もうすでに残り1年半~2年しかない。公表されている直近のデータを見ても、物価が上がるような気配はない。財政が大幅に拡大されない限り、物価上昇率が2%になるような消費増はみこめない。
結論に入ろう。財政政策が現状の緊縮路線をとる限り十年単位で金利は上がらない。もし財政拡張政策に転じられた場合には労働市場に資金が流れ賃金も上がり、結果として物価も上がることになるだろう。しかしあくまでも財政の拡張が原因なので、金融を大胆に引き締めないといけないほどの物価上昇に進むことは難しく、結局、物価上昇率を超える金利にはなりにくい。結果として住宅購入者が払える範囲内での変動金利になる。だから現時点では安心料として固定金利を選ぶ人でなければ住宅ローンは変動金利を選ぶ方がベターだと考える。
(2017/06/12 17:31)
認知症サポーター養成講座を受けました
先週の日曜日、認知症に関わる地域の人たちが集まる座談会に参加いたしました。
在宅療養の会「在宅ネットさが」で告知されていました。
今回は第1回で「認知症サポーター養成講座」が開かれていました。
地域包括支援センターの職員さんが、認知症について教えて下さいました。
奈良に居る時に「バリデーション」という認知症の方に接する方法を教えていただいたことがあります。
興味深く、また共感をしながら拝聴しました。
認知症はボケでも何でもなく、今までできていたことができなくなるという機能障害です。
その結果、起こることは本人が一番気づき傷ついていることだと教えていただきました。
最近、私は、正しさよりも人の感情に興味が向いています。
私は今まで正しいことを実行することを基準にして生きてきましたが、
ある人にとって正しいことはある人にとっては正しくないこともあります。
そこで立場を越えられるのは人間性、その人の感情に寄り添えるかどうかということだと感じています。
認知症の人への対応は、まさにその人の感情に寄り添えているかどうかが問われることになります。
極めて専門的で繊細な感覚がいります。
介護職の皆様に求められていることの重さを実感しました。
また介護職の皆さんがおかれている状況についても伺いました。
私は民主党政権時代に介護職の待遇改善に取り組んできましたし、
昨年の参議院選挙でも介護職の皆さんの待遇改善こそが経済政策になると訴えました。
だから、自分たちの取り組んできたことの価値を再確認できました。
自信をもって訴えていかないといけないと思いました。
これからもいろいろな現場に入っていきたいと思います。
お声がけ下さい。よろしくお願いいたします。
(2017/06/12 16:47)
第21回「黒田日銀総裁の失敗」銀行で滞留する緩和マネー
住宅産業新聞 連載「住宅産業が日本経済を救う」
2017年(平成29年)3月30日(木曜日)号
第21回「黒田日銀総裁の失敗」 銀行で滞留する緩和マネー
【黒田総裁の失敗】
今回は昨年末にお約束をした日銀が失敗した理由について述べたい。思い返せば四年前の春だった。日本銀行の黒田東彦(くろだ・はるひこ)総裁は就任記者会見で二年内に物価上昇率を二%以上にすると宣言した。マスコミも沸いた。本来の目的は物価が上がるぐらいに経済をよくするという意味だ。しかし、実際はどうだったか。現在では経済をよくするという目的は忘れられ、物価上昇率そのものが目的だったかのように扱われている。
「異次元緩和」と呼ばれた黒田総裁の金融政策は、昨年二月から「マイナス金利」まで加わって四年間突っ走ってきたが、効果は実感されていない。結局、昨年の十一月に黒田総裁は事実上の敗北宣言をされた。どうしてこうなってしまったのだろう。黒田総裁はなぜ失敗したのか、今回はその理由をお伝えしたい。
【日本銀行の目的は?】
そもそも、日本銀行は何の目的で作られたのだろう。なぜお札は「日本銀行券」であり「政府紙幣」ではないのだろうか。
明治時代の初めには日本銀行はなかった。だから「日本銀行券」も世の中にはなかった。お金とは政府が直接国民に発行する「政府紙幣」だった。ただ、江戸時代末期から藩札という紙幣が世の中にあふれていて、紙幣の信用が低いことは国家的な問題だった。お金の信用が低ければ国民は使わない。国の経済は回らない。国民は豊かさを実感することもできない。だから、明治政府は何とかして円の価値を高めようとした。
特に大きなきっかけになったのは1877年の西南戦争だった。歴史的には日本最後にして最大級の内乱である。この内乱を抑えるための戦費を政府は政府紙幣の増発でまかなった。膨大な政府紙幣が流通するようになり、ひどいインフレになった。翌年のコメの値段は倍になり、同じ円でも紙幣と銀貨では価値が大きく違ってしまうという現象まで起きた。
現代の財務大臣にあたる大蔵卿に松方正義が就任し、国家財政を緊縮させた。生み出した財源を使って政府紙幣を減らした。この後、1882年になって日本銀行が設立された。つまり、日本銀行が設立された目的は、通貨の価値を高めて物価の上昇を抑えることだった。
【国債は定期預金】
さて、私たちが銀行に普通預金や定期預金の形でお金を預けているように、実は、銀行は日本銀行にお金を預けている。日銀が「銀行の銀行」と呼ばれているゆえんだ。
例えば「日銀当座預金」は銀行にとっては私たちの普通預金のようなもので、私たちが普通預金を銀行引落や銀行振込などで支払いに使うように、銀行は日銀当座預金を他の銀行に対する支払いに使う。基本的には利息はつかない。
また「国債」は銀行にとっては私たちの定期預金のようなもので、満期になるまで毎年利息を受け取れる。だから、余ったお金があったら、基本的に銀行は「日銀当座預金」に入れないで「国債」を買うことになる。
つまり、銀行にとっては
・「日銀当座預金」=普通預金
・「国債」=定期預金
であり、その視点から黒田総裁の金融政策を見れば分かりやすい。
ちなみに、基本的には国債は定期預金のようなものだが、少し違うところがある。国債は定期預金と同様に①満期がある②固定金利であるという2点は共通しているが③債券である点が違う。実は、この特徴があるから、日本銀行は物価を抑えることができる。詳しく言えば、日銀が持っている国債を市場で売ると市場からお金が日銀に戻ってくる。お金が流通する量を減らすとお金の価値が上がる。その結果、お金の価値が上がるので不必要な消費が抑えられ物価が落ち着いていくことになるわけである。
そのメカニズムの真ん中に国債がある。
国債は固定金利の債券なので、市場の金利の変動によって価値が変動する。金利が上がれば価値は下がるし、金利が下がれば価値は上がる。日本銀行は国債を売ったり買ったりすることで市場に流通するお金の量をコントロールし、金利を上げたり下げたりすることができる。
例えば1%の金利で満期まで10年ものの100万円の国債があるとしよう。満期まで残り9年の時点で市場金利が2%に上がっていたとしたら、その国債はいくらで買えばいいのだろう。100万円で買ってしまうと買った人は差の1%の金利分を毎年損することになってしまう。だから100万円から1%×9年分=9万円を引いて売買価格は91万円になる。このようにして、金利が上がれば国債の価値は下がり、金利が下がれば国債の価値は上がるというしくみになっている。
国債がこのような機能をもっているため、日銀は国債を市場で売ることにより自らが発行するお金の価値を上げることができる。
【黒田総裁の失敗】
黒田総裁は、日銀はお金の価値を上げることができるのだから、市場に流すお金の量を増やすとお金の価値を下げることができると単純に考えたのだろう。しかし、金融市場にお金を流しても、そのお金は銀行で滞留して民間には流れてこなかった。結果として、お金の量は増えずお金の価値も下げられなかった。
結局、黒田総裁が四年間でやったことは銀行の持っている国債をかなり強引に買い取って日本銀行に当座預金として預けさせただけである。皆さんの家計でたとえるなら、銀行が普通預金の利息を引き上げて定期預金を普通預金に預け替えするように奨励したようなものだ。
黒田総裁は、お金が定期預金に入っていれば使いにくいから、普通預金に預け替えてもらったらお金は使ってもらえるという発想をしたのだろう。でも実際に起こったことは想定とは違った。日銀当座預金に預けられたお金は動かず民間にお金は流れていかなかった。
【お金の機能と国債】
なぜお金は流れていかなかったのだろう。
民間にお金を流すには、この連載で伝えてきたように①銀行が民間にお金を貸すか、②政府が国債を発行して銀行からお金を得て予算の執行を通して民間にお金を流すかしか方法がない。日本銀行は、金融緩和により銀行にお金をたくさん持たせれば、銀行も民間にお金を貸すようになるだろうと考えた。しかし、銀行にしてみれば貸し倒れのリスクと得られる金利の低さを比べると、なかなか積極的には民間にお金を貸せなかった。
前述のように銀行としては日銀当座預金に預けるよりも国債として持っていた方が基本的に儲かる。そこで黒田総裁は、奇策を打ち続けてきた。
第一段階は、2015年末までは新規で日銀当座預金に銀行がお金を預ければ金利を0.1%つけてきたことである。従来、日銀当座預金は「当座預金」という名の通り、金利はゼロだった。銀行は金利ゼロの日銀当座預金にはお金を預けたくなかった。そこで、日銀は金利を0.1%つけ、かつ高値で国債を買い取ることで日銀当座預金の残高を増やしていった。
第二段階が、2016年2月から始まったマイナス金利政策である。マイナス金利で銀行が損をする分についても日銀が国債を買い取る際にその分を上乗せする形で買い更に日銀当座預金の残高を増やしていった。
ここでポイントは、日銀当座預金に課されるマイナス金利の部分が大きくなると銀行の収益が圧迫されるので銀行の貸し出し余力がなくなり、かえって銀行から民間への貸し出しが抑えられる可能性が出てくることである。それでは本末転倒なので、日銀はマイナス金利の部分が大きくなると、マイナス金利の範囲を見直してゼロ金利が適応されるようにしている。また、2015年末までの日銀当座預金についてはプラス0.1%の金利はつけ続けている。
黒田総裁がこの4年間で行ってきたことは、この二段階の奇策に過ぎず、結局は、銀行が日銀に預けているお金を定期預金から普通預金に付け替えさせているようなもので、銀行から民間にお金を流すことについてはほとんど何もできていない。
【解決策は財政の拡大】
解決策は原点に戻ればいい。日銀が創設された目的は財政の拡大に歯止めをかけて物価を抑えることだった。だからデフレの状況では物価の上昇が見られるまでは経済対策として財政を拡大すればいい。結論は単純だが従来の通説と異なる。(インテリ層からはかえって理解をえられにくいのが今の私の悩みである。)
(2017/06/12 17:27)
第20回「空家対策が本格化へ」住み替え支援カギに活性化
住宅産業新聞 連載「住宅産業が日本経済を救う」
2017年(平成29年)2月23日(木曜日)号
第20回「空家対策が本格化へ」住み替え支援カギに活性化
空家対策と既存住宅の流通促進
今年は、住宅産業にとって新しい動きがでてきそうだ。特に、今年は空家対策をきっかけにして既存住宅の売買や賃貸、空家を取り壊した後の土地の売買が進んでいく動きがでてくるのではないかと注目している。というのも各市町村では昨年行われた空家調査が終わり、この三月議会で空家対策に向けた基本計画が策定され、四月からは各市町村で取り組みが始まることになるからだ。
ただ現状には問題がある。市町村行政の関心は「特定空家」、すなわち状態が悪く打ち壊しの対象になるような空家への対策にとどまり、一般的な空家を流通させて「特定空家」にならないような対策を取るべきだという姿勢にまでなっていない可能性が高い。空家対策を実効的にしていくためには、地域の不動産業者・工務店(建築業者)・金融機関(銀行・信用金庫)などの民間事業者が協働して連携体制を作っていく必要がある。市町村行政には一歩踏み込んで民間事業者の連携体制作りに取り組んでいただきたいと思う。
民間事業者の連携体制づくり
空家はなぜ空家になったのだろうか。大きな家が空家になるには、①子どもたちが独立して夫婦二人での生活になった→②どちらかが亡くなって一人の生活になった→③二人ともなくなって空家になり管理する人がいなくなった、という三段階が通常の流れになろう。
そうすると、夫婦二人かどちらか一人の①②の段階では未だ住宅を管理する人がいたものが、両方が亡くなった③の段階になると管理する人がいなくなり空家になってしまうということが分かる。相続人である子どもが遠隔地に居る場合には、手を打つことが難しくなる。つまり、①②の段階で対策を取ることが本当の意味での空家対策になるという常識的な結論になるのだが、ここが難しい。所有者である御夫婦にとっては自分たちが亡くなった後の話なので積極的に空家対策をしなくてはいけないという気持ちにはなりにくい。だからこそ、今日まで空家対策が十分には進んで来なかった理由がある。
空家対策をするには、①や②の段階で、所有者である御夫婦が積極的に住みかえをしようという気持ちになるしくみを作るしかない。住みかえた方がより豊かで気持ちがいい生活が送れると思っていただけるような環境を提供することが事業者の使命になる。
今号では、そのための方法として、二つの方法を検証してみたい。一つはサービス付き高齢者住宅、もう一つは移住・住みかえ支援機構による家賃保証である。
サービス付き高齢者住宅
「サービス付き高齢者住宅」(以下「サ高住」と略)は民主党政権時に成立した高齢者居住安定確保法に基づくしくみであり自民党政権に戻った後も継続されている。一般的な介護施設とは異なり、住宅型であるサ高住は自宅として自由に過ごすことができ、介護サービスを利用する場合には自分が選んだ在宅介護サービスを自宅にいながら医療者や介護者に訪問してもらうという形をとる。自宅にいる自由さと共に必要に応じて介護サービスを兼ね備えている。またサ高住は新しいしくみなので建築される建物も新しい建物になる。光熱水費を抑えるためにも、いま普及しつつある高気密・高断熱住宅として建築されれば、古い住宅に住むよりも快適になる。
つまり、広い家に夫婦二人ないし一人で住むことよりも、自由・安心・快適に過ごせる環境を得ることができる。このようなメリットが理解されるようになれば、空家になる前に住みかえが起こり、空いた自宅を別の形で活用しやすくなる。
サ高住のメリットは、供給者側の土地の所有者や建築会社にもある。
土地の所有者には相続税が安くなるというメリットや安定した収入が入ってくるというメリットがある。人口が減る中で一般賃貸住宅はこれから空室率が高くなると予想される。しかし現状でも全く足りていないサ高住は、これから高齢化が進みますます必要になってくる。温度変化に敏感なお年寄りにとって、冬温かく夏涼しい高気密・高断熱のサ高住に住む需要は増えることはあっても減ることはない。
建築会社には、一般の注文住宅と異なり仕様も設備も規格化された一般的なものでいいというメリットがある。画一的な間取りや一括購入の部材によりコストダウンもできる。建築会社が所有者から一括借入をして入居者を直接募集したり併設する介護事業者を選んだりすることもでき収益源を増やすことができる。建築資金を融資する銀行にとっても、収入が安定するサ高住は融資先として魅力的になる。
JTIの家賃保証
次に住みかえをした後の自宅をどのように活用するのかということを考えてみたい。子どもが地元から離れている場合、自宅を将来子どもが引き継ぐことを願い、すぐに自宅を手放すことに踏み切れない人も多いだろう。ただ、サ高住に入るにしても費用がかかり年金だけでは必要な家賃や生活費を賄うのに精一杯でお小遣いもないことになる。やはり賃貸に出すのが一番の選択肢になりそうだ。そこで公的に用意されているしくみが「移住・住みかえ支援機構」(以下「JTI」と略)の家賃保証である。
所有者はJTIと三年の定期借家契約を結ぶ。この定期借家契約は三年ごとに再契約される。つまり所有者側は終身まで預けて安定収入を確保することもできるし望めば三年の契約満了で自宅は戻ってくる。また借主側から見れば供給が少ない一戸建て賃貸住宅に住むことができ、また定期借家契約になるので家賃も割安になる。
JTIのしくみが特徴的なのは所有者に対する家賃保証が用意されている点である。所有者としては、終身の期間、収入が変わらないので安心してサ高住に入居するなどのライフプランを立てることができるわけである。
いいことずくめに見えるJTI家賃保証だが、期待されているほどには使われていない。毎月の家賃については八五%が所有者に支払われ、十%がJTIの家賃保証基金に入り、五%が仲介した不動産業者に支払われる。①家賃の五%の管理料では不動産業者が受けない。②所有者にとって定期借家は普通借家よりも家賃が安くなる上に、JTIの家賃保証をつければ家賃そのものも八五%しかもらえない。この二つがネックになっている。そのうえ、制度がそもそも知られていない。
状況を変える方法は、市町村が空家対策として広報などで告知すると共に、当初数年は必要経費などを補助して流通する物件数を増やすことである。現状ではJTIの協賛事業者になったとしても物件数がほとんどないので年間1件も仲介することができない。これではボランティア的に協力しようとしても経済的にマイナスばかりなので続かない。もし、物件数が増えて安定的に使えるようになれば所有者も入居者がつかないリスクよりも安定した収入を優先する人も増え、更に物件数が増えるという好循環が生まれることになるだろう。
ワンストップサービス
今号ではサ高住と家賃保証の組み合わせで住みかえ支援をするという方法をお示しした。住みかえにより自分たちの生活がより快適で豊かになるというイメージを持っていただければ、これらの方法も活用され住宅産業の活性化にもつながっていく。私も引き続き連携の必要性と具体的なテーマの明確化に取り組んでいきたい。
空家対策で問題になるテーマは非常に幅が広い。相続がらみでは権利関係の整理、遺品の整理、管理のあり方などが問題になるし、所有者が活用に出そうと思っても不動産業なのか工務店なのかどこに相談に行ったらいいのかも分からない。各分野の専門家であっても全体像は掴みにくい。
一番必要なのは、消費者側が相談できるワンストップな窓口サービスである。しかし、行政では人手が足りずにそこまで手を出せない。だから、まず行政と各専門家集団が協働して地域の連携を取るしくみを作る必要がある。それも、公平性・中立性が確保されていなくてはならない。つまり、参加がオープンであり、参加者に対する評価が中立的であることが必要だ。そのためには、口コミ情報やクレームを公開することも必要になろう。これらの点についても今後より深い検証をしていくことにしよう。
(2017/06/12 23:48)
クラウディングアウトのしくみ
クラウディングアウトという現象について考えてみよう。クラウディングアウトとは、広辞苑によれば「政府の公債増発が民間の資金重要と競合して金融市場を逼迫させ、金利の高騰を招いて民間企業の資金調達が締め出されること。」と定義されている。これはどのようなメカニズムで起こるのだろうか。まず政府が国債(公債)を増発する。
これにより、政府は得たマネーを使って政府の支出を拡大する。その支払の決済として、政府が(公債発行によって得た)マネーを民間に流す。この分のマネーは民間が保有するマネーが単純に増えるという結果になるので、マネーストックは増える。マネーストックが増えるので、物価が上昇する可能性が生まれる。(貨幣数量説の通り)物価が上昇した場合には、中央銀行が金融の引き締めを行う結果、金利を上げるため、銀行による融資が抑制され、民間企業がお金を借りにくくなる。以上がクラウディングアウトのメカニズムだと考えられる。従来の通説的説明では、国債発行+政府支出増によるマネーストック増をハッキリと意識していないために物価が上がらない場合にもクラウディングアウトが起こるかのような曖昧な説明になっていると思われる。上記の説明では、マネーストックが増えても、分配が不十分でマネーの所有者が偏在するようなケースでは物価は上昇しないこともありうる。物価が上昇しないケースでは、中央銀行は金融引き締めを行わないので、金利は上がらず、銀行による融資姿勢には変化がないことになる。ただ、その場合も、そもそも(物価が上昇しないような不況下においては)銀行による融資姿勢は消極的なので、新規の融資は抑制され、信用創造の第1の経路でのマネーストック増は期待できないということになる。このようにクラウディングアウトは起こっていないけれども、実際上は融資がなされないために、クラウディングアウトが起こっていると解釈する人が出てくるという点が、不況の場合にクラウディングアウトの理解をしにくくしている原因になっているとも思われる。
(2017/06/12 16:47)
なぜマネーストックの上限が法定準備率で決まると考えているのだろう?
なぜ多くの経済学者はマネーストックの上限が法定準備率で決まっていると考えているのだろうか… という疑問が尽きませんでした。今日は、出張で東京に居るのですが、ふと空港に向かうバスの中で気づきました。今日は、そのことを記事にしたいと思います。先日のブログにも書いたように、多くの経済学者は、
銀行が日本銀行に預けている日銀当座預金の額が先ず決まり
→それに法定準備率(の逆数)をかけて(法定準備率で割って)
→マネーストックの上限が決まる=信用創造の制限になっている
という考え方をしています。しかし、実際には、
融資など銀行が行う「預金設定」の結果、マネーストックの額が決まる
→それに法定準備率をかけて
→日銀当預預金(の最低額)が決まる
という流れで日銀当座預金の額が決まります。そのため、日銀当座預金を人為的に増やしてもマネーストックが連動して自動的に増えるということはなく、必要以上の当座預金が日銀当座預金口座に積み上がるという、いわゆる「ブタ積み」という現象が生じます。(マネーストックの量は、貸し出しか、国債の発行+政府支出増でしか増えませんのでね。)それでは、銀行が自行の設定している預金総額では、日銀に預けている当座預金の額が不足するような場合にはどうするのか、というと
1.まずは短期無担保市場で日銀当座預金を他の銀行から借りる
2.手持ちの日銀当座預金を増やしたい場合には、持っている日本国債を市場で売って日銀当座預金を増やす(他の銀行から国債の代金を日銀当座預金口座に振り込んでもらう)
という方法で各銀行は法定準備率に見合う日銀当座預金を確保します。つまり、財務状況が普通であれば他の銀行が融通してくれますし、融通してくれた金額がある程度まとまったら国債を売って返せばいいのです。そうか、と思ったのは、
昔は、金本位制だったので、元金になるのが金(ゴールド)であり、今のように簡単には元金を調達することができなかったという事実
に気づいたからでした。戦後もブレトンウッズ体制の下で、各国通貨とドルとのレートは固定化され、ドルは金と交換可能でした。アメリカの中央銀行が保有する金(ゴールド)の量によりドルのマネーストックの上限は規定されているような状況だったと思われます。そのため、レートが固定されている各国の通貨も、間接的にアメリカが保有する金(ゴールド)の量によって制約を受けるという理論を経済学者の皆さんが採用されたのは理解できるような気もします。まあ、経済成長や貿易収支が各国によって違いますし、その数字も毎年変わります。そのような中で金(ゴールド)を中心に通貨のレートを固定するということがそもそも無理な話だったということです。そこで、1971年のニクソンショックに繋がったわけです。ニクソンショックの後は、完全に通貨の価値と金(ゴールド)の保有量は切り離されましたので、通貨の流通量のコントロールは中央銀行当座預金とその国の通貨建ての国債で行われることになりました。だから、今の時代は、かつての金(ゴールド)の保有量で制約を受ける時代とは違う理論構成が必要になったのだと思います。ちなみに今も必要以上の日銀当座預金が積み上がっていますが、これは、法定準備率によって義務づけられている日銀当座預金の額を超えるもの(これを超過準備と言います)には基本的に0.1%の金利が付いているからです。この部分の日銀当座預金を使って国債を買っても、国債の金利の方が安いので損をしてしまいます。だから、日銀当座預金口座に積まれたままになっているのです。順を追って理解すれば簡単な話なのですが、なかなか広まらないですね。
(2017/06/12 16:47)
信用創造の第2経路についての文献
(2017/01/12追加)先日のブログで信用創造の第2経路についての文献がほとんどないと書いたところ、読者の方から以下の御紹介をいただきました。私が調べきれなかっただけでした。ここに訂正致します。以下、御紹介いただいた内容です。
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1.建部正義中央大学教授「国債問題と内生的貨幣供給理論」http://ir.c.chuo-u.ac.jp/repository/search/item/md/-/p/5721/
(引用開始)つまり、こういう次第である。すなわち、①銀行が国債(新発債)を購入すると、銀行保有の日銀当座預金は、政府が開設する日銀当座預金勘定に振り替えられる。②政府は、たとえば公共事業の受注にあたり、請負企業に政府小切手によってその代金を支払う、③企業は、政府小切手を自己の取引銀行に持ち込み、代金の取立を依頼する、④取立を依頼された銀行は、それに相当する金額を企業の口座に記帳する(ここで新たな民間預金が生まれる)と同時に、代金の取立を日本銀行に依頼する、⑤この結果、政府保有の日銀当座預金(これは国債の銀行への売却によって入手されたものである)が、銀行が開設する日銀当座預金勘定へ振り替えられる。⑥銀行はもどってきた日銀当座預金でふたたび国債を(新発債)を購入することができる、⑦したがって、銀行の国債消化ないし購入能力は、日本銀行による銀行にたいする当座預金の供給の仕振りによって規定されているのだ、と。(引用終了)
2.近廣昌志愛媛大学講師「国債発行の市中消化に関する考察」『企業研究』第15号,中央大学企業研究所、2009年
3.山口義行立教大学教授書籍:『山口義行の”ホント”の経済』(引用開始)「政府の債務残高が国民の金融資産残高にだんだん近づいてきている。だから財政破たんは間近だ」という主張は正しいのか山口 こういう説をとなえている人たちの頭からは、大事なことが忘れ去られている。それは、「政府債務が増加すると、それに応じて国民の金融資産も増加する」のだという事実。柳田 えっ、そうなんですか。山口 たとえば、政府が一〇兆円の国債を新たに発行して銀行に買ってもらったとしよう。そうして手に入れた一〇兆円を政府が財政支出すれば、その一〇兆円は国民(企業や個人)の手に渡る。国民はそれを銀行に預金するよね。それで一〇兆円が再び銀行の手元に戻ってくるんだけど、このように一〇兆円の資金が一回りすると政府債務が一〇兆円増えるとともに「預金」という国民の金融資産も一〇兆円増える。柳田 そのとおりですね。(引用終了)
4.堀内昭義元東京大学教授書籍:『金融論』(引用開始)p214〜この表によると、中央銀行の貸借対照表が全く変化しないにもかかわらず、民間部門の保有する銀行預金は増加している。つまり国債の民間銀行引受によって、マネーサプライは増加するという結論が得られる。(引用終了)
5.日銀HP内にある報告書「金融研究会における「国債に関する諸問題の理論的検討」の討議結果」(引用開始)p76市中消化の場合、個人消化はマネーサプライに変化をもたらさない。一方銀行消化では、市中銀行の段階で国債保有と預金が同額増加するが、現金準備が増加しないので過少準備の状態となり、本来ならば銀行は信用供与を削減しなければならないことになる。しかし、日本の市中銀行はクレジット・ベースの観念が薄く、また金利機能も十分働いていないので、市中銀行が信用供与を削減するという自律的調整力は弱く、日銀借入への追加需要をひきおこしやすい。これに対し、ハイパワード・マネーの供給を拒否すること(短期的なハイパワード・マネーのコントロール)には限度があり、この結果マネーサプライの増加につながり易いことが認識された。(引用終了)
6.中村てつじ元参議院議員
ブログ『中村てつじの「日本再構築」』
http://d.hatena.ne.jp/NakamuraTetsuji/20130907(引用開始)このように、「国債の発行(引受)+政府支出」の過程を見れば、日銀当座預金の額は、全体を通じて10兆円で変わりません。つまり、国債を発行しても、結局、政府支出により銀行にお金が戻ってくるので、マネタリーベースの額は一定だということがわかります。銀行全体の資産としては、日銀当座預金10兆円の他に、国債1兆円が増えていることがわかります。銀行全体の負債としては、資産の国債1兆円にバランスする形で、民間に対する預金が増えていることがわかります。このように、政府が1兆円債務を増やしている分だけ、民間が持つ預金の量が1兆円増えているということがわかります。つまり、マネーストックの量が増えています。(引用終了)
7.大和総研レポート 資本市場調査部 土屋貴裕
「銀行の国債保有が預金を増やす」
http://www.dir.co.jp/research/report/capital-mkt/12031501capital-mkt.html
8.五十嵐敬喜法政大学教授
http://www.murc.jp/thinktank/rc/column/igarashi/column/igarashi120419(引用開始)この批判は、別の観点からも補強される。マクロ的に見ると、銀行は運用先のない預金を国債に投資しているのではない。事実は、銀行が国債を購入するから預金が増えるのである。これは、銀行が持つ信用創造と呼ばれる機能の一部だ。銀行が資産である貸出や証券保有を増やすこと(原因)によって、負債である預金が増加する(結果)というものだ(注)。(引用終了)
9.「金融政策と日本経済」
1993年3月
吉川 洋(経済企画庁経済研究所客員主任研究官、東京大学経済学部教授)
堀 雅博( 同 研究官付)
堀 宣昭( 同 研究官付)
井村 浩之( 同 委嘱調査員、東洋信託銀行)
渡辺 俊生( 同 委嘱調査員、東邦生命保険)
竹田 陽介( 同 部外協力者、東京大学大学院)http://www.esri.go.jp/jp/archive/bun/bun128/bun128.html(引用開始)p134しかし銀行部門が政府から直接国債を購入したとき(つまり銀行が政府の国債発行を引き受けた時)には、銀行部門のバランスシート上では、国債保有残高の増加と同じ額だけの準備が減少し、一方日銀のバランスシート上で同額の政府預金の増大がみられることになる(図Ⅶー6)。つまり銀行による国債の購入という行為にかぎれば、信用創造は行われていない。したがってマネー・サプライはその時点では未だ増大しない。実際に銀行預金が拡大するのは、政府が財政支出を行った時である。政府から民間部門への払込によって銀行預金が拡大し、決済の段階で政府預金が減少し、銀行部門の準備預金が回復することになる。現実には準備率というアンカーが存在するわけだが、後で見るように、日銀が追加的に銀行準備を供給したり、準備率を引き下げることによって政府支出は最終的にファイナンスされることになる。(引用終了)
10.「マネー・サプライの増加について」※おそらく日銀の資料
http://www3.boj.or.jp/josa/past_release/chosa197302a.pdf(引用開始)一般に広義マネー・サプライの変動要因は、次の三つである。
(1)要求払預金と定期性預金を供給しあるいは取り扱う金融機関が、企業、個人などのその金融機関以外の民間部門に対する信用を増減(△)させた場合(対民間信用による供給)。(2)その金融機関や日本銀行が国債引受け、償還(△)などの形で政府に対する信用を増減(△)し、政府がその資金を企業、個人など金融機関以外の民間部門へ支出したり、同部門から引き揚げしたり(△)した場合、および政府がすでに保有している日銀預け金を取りくずして金融機関以外の民間部門へ支出したり、同部門から引き揚げて日銀預け金に積んだ場合(対政府信用による供給)。(3)企業、個人などその金融機関以外の民間部門が輸出や資本輸入、輸入や資本輸出(△)によって海外と外貨を授(△)受し、この外貨をその金融機関との間で売買(△)した場合(対外資産による供給)。ここで変動要因について若干注意を要することは、第1に日本銀行の市中金融機関に対する信用供与(貸出<資金貸を含む>、オペ)は、広義マネー・サプライの変動には直接には関係ないこと、第2に金融機関が国債消化、引受けなどの形で政府に対する信用を増減した段階ではなく、政府がそれで得た資金を支出したり、それに要する資金を引き揚げたりした段階で広義マネー・サプライの変動が生ずること(市中金融機関の国債保有増加<日銀買オペ前>と一般財政対民間収支<国債発行を含む>の合計が関係していること)、第3に金融機関が外為会計の売買、貸借を行っても広義マネー・サプライの変動には関係ないことなどである。(引用終了)
11.「信用創造とマネーサプライ」August 1999
* 杉原茂(経済企画庁経済研究所主任研究官)
* 三平剛(同研究官)
http://www.esri.go.jp/jp/archive/dis/dis087/dis87.htmlこの論文の、第2節 バランスシートの動向とマネーサプライに次のような記述。(引用開始)上で見たように、銀行による国債の引き受けは、それだけ取り出してみればマネーサプライに影響を与えない。しかし、政府がそれによって得た資金で事業を行うならば、財政支出がなされた時点で通貨保有主体への資金フローが生じ、マネーサプライは増大することとなる5。一方、同じく国債発行によってファイナンスされた財政支出でも、国債が法人や個人により購入された場合には、マネーサプライは国債購入時点では減少となり、財政支出を待って最終的には元の水準に戻る6。(引用終了)
12.「日銀の金融調節とコールレート 他」
* <分析1>日銀の金融調節とコールレート
* <分析2>金融政策の波及経路と政策手段
平成12年11月
<分析1>
細野薫(経済企画庁経済研究所部外協力者、名古屋市立大学助教授)
杉原茂(同 主任研究官)
三平剛(同 研究官)
<分析2>
杉原茂(経済企画庁経済研究所主任研究官)
三平剛(同 研究官)
高橋吾行(同 委嘱調査員、朝日生命保険相互会社)
武田光滋(同 委嘱調査員、東京海上火災保険株式会社)http://www.esri.go.jp/jp/archive/bun/bun162/bun162.htmlこの分析2の「金融政策の波及経路と政策手段」に次のような記述。(引用開始)上で見たように、銀行による国債の引き受けは、それだけ取り出してみればマネーサプライに影響を与えない。しかし、政府がそれによって得た資金で事業を行うならば、財政支出がなされた時点で通貨保有主体への資金フローが生じ、マネーサプライは増大することとなる19(引用終了)
13.福田泰雄「国債発行とインフレーション」https://hermes-ir.lib.hit-u.ac.jp/rs/bitstream/10086/9295/1/HNkeizai0002901110.pdf(引用開始)p139最終的には、一方の国債増加と他方の財政散布に伴う預金増加とが見合うことになるが(引用終了)
14.(当時)大蔵省銀行局長、田辺博通氏「金融財政事情1976年1月5日号」(引用開始)
問題となるのは、国債大量発行の民間金融に及ぼす影響であろう。事実、民間金融が圧迫されるのではないかとの危惧が、一部にはあったようだ。これには、国債が年度の途中で相当多額に追加発行されたということが、影響しているように思う。すなわち、金融機関それぞれが、事前にそうしてた量と比べてはるかに多くなったために、予定が狂ってきた。そして、先行きの不安からある種身構えの状態が起こったのは、確かだった。しかし、国債が大量に発行されても、不況対策を含めて相当の財政支出が行われているのであり、財政資金はかなりの散布超過になる。しかもそれが、景気刺激の目的で行われているので、金融機関サイドから考えれば、預金の増加になってハネかえってくる。つまり、金融機関全体からみると国債を消化するために民間貸出をカットしなければならぬということにはならない。先般の準備預金率の引下げや日銀における年末の金融調節、買いオペ等が早め早めに決定されているのは金融機関側のそういった実態のない不安感を取り払おうというものでもある。今後しだいにその実態が明らかになってくれば、総体として資金が縮まらないことが理解されるのではないか。(中略)ただ、その場合、物価については常に配慮しなければならない。国債が主として金融機関に消化されるということは、流動性をふくらます要素となる。マネーサプライは、国債が一般の個人に消化される場合とくらべてふえる。供給力に相当余力があり、経済活動が沈滞している場合はまったく心配はいらないが、―むしろマネーサプライがふえるようにしないといけないけれども、景気が上昇してきた場合には同じ態度をとることはできない。(引用終了)
15.日本銀行金融研究所『わが国の金融制度』1986年8月(引用開始)p474〜475市中銀行(マネーサプライ供給機関)引受によって国債が発行され、その代り金によって民間非銀行部門に対して財・サービスの購入代金が支払われたとしよう。この場合、国債が発行される第一次段階においては、金融機関は国債保有増となると同時に国債払込代金分だけ準備預金が減少する(銀行準備が国債引受前において均衡状態にあったとすると過少準備が発生)。この段階では民間非銀行部門の現預金には何ら影響がないから、マネーサプライは動いていない。次に国債代り金が財・サービス購入のために支払われる第2段階においては、財・サービスを提供した民間非銀行部門はその代金を現金ないし銀行預金の形で保有し(すなわち、マネーサプライが増加)、一方銀行ではそうした民間非銀行部門の動きに応じて資産面での準備預金増加と負債面での預金増加が生じている。結局、第1、第2段階を合わせてみれば、金融機関はその準備を国債引受前の状態まで回復し、一方マネーサプライが国債発行額と同額だけ増加している。つまり準備は不変でマネーサプライだけが増加している。これは若干の過小準備の発生である。(引用終了)
16.「日銀:調査月報:1976年(昭和51年)増刊 II マネーフローの変化と今次金融緩和の特色」http://www3.boj.or.jp/josa/past_release/chosa1976zkc.pdf(引用開始)しかし何といっても、最も際立った特徴は、対公共部門信用の増加寄与度が高まったことである。国債引受け等を通ずる対政府信用供与は50年中を通じほぼ一貫してマネーサプライの伸びを高める要因となった。(引用終了)
17.「日本銀行月報:1995年(平成7年)マネーサプライ統計とその変動の分析手法 7月」http://www3.boj.or.jp/josa/past_release/chosa199507c.pdf(引用開始)p76財政赤字分の国債を通貨発行銀行が保有し、かつ通貨保有主体は財政赤字分だけM2+CDの保有を増加させた場合、通貨発行銀行のB/S上では国債の増加とM2+CDの増加がバランスする。したがって、この場合財政赤字はM2+CDの増加と対応する。(引用終了)
18.石田定夫(元明治大学教授)「デフレ経済と資金循環―その態様と問題点― [要旨] 証券経済研究 第38号(2002年7月)」http://www.jsri.or.jp/publish/research/38/38_10.html(引用開始)(4)マネーサプライ統計によれば,最近数年間のM+CDの増加は年率23%で,おもに銀行の国債引き受けと対外資産の増加によって賄われた。銀行貸出は純減し,むしろ通貨供給の減少要因となった。およそ経済活動に必要な預金通貨の供給は,銀行の対企業貸出によって行われるのが通常の姿であり,それがおもに銀行の国債引き受けによって行われて,貸出が純減した状況はデフレ局面の特異な動きというほかない。(引用終了)
19.横山昭雄『真説 経済・金融の仕組み』(引用開始)p171〜p172これに関連して最近の金融情勢報道につき述べておきたい。近年(2008〜2013年)の金融情勢につき、新聞・雑誌の報道では「銀行は、預金は集まるが、貸出先がないのでもっぱら国債を購入している」と伝えられることが多い。確かにミクロの銀行行動としては、そのように見えるし、解釈されもしようが、これをマクロの視点で見ると、全く逆。銀行が国債を買うから、引き受けるから、それよる調達資金が政府によって支払われ、それが預金となって銀行に集まってくる(つまり対政府与信を始発とするMS増現象)、と解するのが正しい。(引用終了)
20.「量的・質的金融緩和(QQE)下でマネーはどこから生まれ、どこへ消えたか」 2015年04月01日http://www.keieiken.co.jp/pub/yamamoto/column/column_150401.html株式会社NTTデータ経営研究所 取締役会長 山本 謙三(引用開始)この関係を理解するために、ここでは、まず中央銀行が新規発行国債を引き受ける場合を想定してみよう。この場合、中央銀行による国債引き受けの対価は、政府により財政資金として市中に支払われる。この結果、財政資金の支払いを受けた企業や家計の預金が増える。 その後、企業や家計がこれを原材料の購入や消費等にあてると、預金は取引相手に移転する。しかし、経済全体でみれば、預金の総量は変わらない。すなわち、新規発行国債の中央銀行引き受けは、――中央銀行が別途資金を市中から回収しない限り、――マネーストックをほぼ同額増やすことになる。 もちろん、現在の日銀は新規発行の国債を引き受けてはいない。国債の引き受けは財政法上原則禁止されている。しかし、日銀は、国債の発行後、比較的早い時点からこれを買オペの対象とし、市中から買入れている。マネーストックに対する影響の観点だけからみれば、新規国債発行相当額の国債買いオペは、引き受けの場合とほぼ同等の効果をもつ。 日銀は、QQE開始後これまで、新規国債発行相当額の2倍近い国債を市中から買い入れてきた(ネットベース)。したがって、マネーストックは、少なくとも新規国債の発行に見合う金額分増加するのが自然である。事実そうなった。QQE下のマネーストック増加は、日銀による新規国債発行相当額の買いオペの結果といえる。(引用終了)
21.「日本のクラウディング・アウト」藤川清史名古屋大学大学院教授1986年6月http://www.gsid.nagoya-u.ac.jp/fujikawa/pdf/others01.pdf#search='%EF%BD%A5+%E5%9B%BD%E5%82%B5%E7%99%BA%E8%A1%8C%E3%81%AF%E3%83%9E%E3%83%8D%E3%83%BC%E3%82%B5%E3%83%97%E3%83%A9%E3%82%A4%E3%82%92%E5%A2%97%E5%8A%A0%E3%81%95%E3%81%9B%E3%82%8B'
(引用開始)p7次に民間金融機関保有の場合、国債発行の段階で民間金融機関は、日銀から信用供与を受け、国債を保有すると考える。財政支出の行われた段階で、民間非金融部門から民間金融部門への預金が100増加し、民間金融部門は日銀へ、借入金を返済する 。結果として国債保有を民間からの預金でファイナンスしたことになり、マネーさサプライは100増加する。(引用終了)
22.加藤出書籍:『日銀は死んだのか?』(引用開始)p65〜また、第5章で見る高橋是清財政の時のように、国債発行が日銀直接引受で行われるならば、マネーサプライを増加させるイメージはつかみやすいと思われる。しかし、国債発行が市中公募の場合であっても、日銀が資金過不足を均す同調的な金融調節を行えばマネーサプライは増加する。(引用終了)
23.住友銀行 調査第一部編書籍:『銀行・金融問題の要点解説』第2章 マネー・サプライ 国部毅(引用開始)p37〜次に、民間金融機関引受けによって一〇〇の国債が発行される場合についてみますと、国債発行時点では、民間金融機関バランスは資産側で国債が一〇〇増加し、負債側で日銀借入が一〇〇増加します。次に、財政支出がなされた時点では、民間金融機関バランスは負債側で預金が一〇〇増加し、同時に日銀借入が一〇〇減少します。このため、日銀バランスは最終的には国債発行以前と変わらないことになります。したがって、マネー・サプライへの影響を見てみますと、国債発行と同額だけ預金が増加しているわけです。(引用終了)
(2017/06/12 16:47)
【コラム】2つのマネー
ここで、マネタリーベースとマネーストックの言葉の意味を書いておこう。マネタリーベースとは、日本銀行が銀行に対して発行するお金の量のことである。具体的には、日本銀等当座預金、日本銀行券、貨幣(コイン)の総量を指す。マネーストックとは、銀行が民間に対して提供しているお金の量のことである。具体的には、預金、日本銀行券、貨幣の総量を指す。マネタリーベースとマネーストックの差は「信用創造」と呼ばれている。イメージとしては、銀行にとって、日銀当座預金は元金、預金は日銀当預口座を元にして発行しているお金と思って下さればいい。というわけで、銀行にとって日銀当座預金は資産、預金は負債になる。ヘリコプターマネー作者: 井上智洋出版社/メーカー: 日本経済新聞出版社発売日: 2016/11/25メディア: 単行本(ソフトカバー)この商品を含むブログ (9件) を見る
(2017/06/12 16:47)
追記3:井上智洋著「ヘリコプターマネー」の先進性
このブログでは井上智洋著「ヘリコプターマネー」の記述の中で不十分だと思う点を指摘はしているが、それだからといって読者には決して本書が読むに値しない本だとは思わないでいただきたい。本書は先進性があり、その点は高く評価されるべきだからだ。どこが先進的なのか。本書の最大のポイントは、物価と貨幣量の関係を考える場合に、マネーストックと物価の関係を考える必要があると明確に述べている点である。本書のP.136〜138をご覧頂きたい。
「「貨幣量」といっても「マネタリーベース」と「マネーストック」の二つの指標がある」(P.136)「これら二つの貨幣量の区別は経済学者なら誰でも知っていることだが、それにもかかわらず一体どちらの貨幣量について言及しているのか明確にせずに話が進められることが少なくない」(P.137)
私が指摘している点をたいしたことないと思われる読者もいらっしゃるかも知れないが、私の経験上、まさに経済学者の多くがマネタリーベースとマネーストックを混同して議論していることに混乱の原因があると感じてきた。その点を経済学者でいらっしゃる井上先生が正面から指摘されている点に、本書の大きな価値がある。経済学の教科書でも、マネーストックとマネタリーベースを混同している記述は多い。特に、マネタリーベースを増やせば、そのままマネーストックが増えるということを前提にして書かれている。(【コラム】 マネタリーベース、マネーストック、信用創造 言葉の意味)http://d.hatena.ne.jp/NakamuraTetsuji/20161229#p2その大きな原因は、従来はマネタリーベースを増やせばマネーストックが増える傾向にあったからである。特に政策金利が高い時には、政策金利を下げる=金融緩和をすれば貸し出しが増え、マネタリーベースもマネーストックも伸びた。そのため、多くの経済学者がマネタリーベースの量とマネーストックの量に因果関係があると思ったのだろう。ただ、信用創造のメカニズムを押さえると、マネタリーベースを増やしても、そのまま自動的にマネーストックが増えるわけではないことは分かるはずである。両者は今まで相関関係にあっただけで、相関関係が切れる条件も認識すべきだったと私は指摘したい。なぜ、信用創造のメカニズムはあまり知られていないのか。原因は私にも分からないが、例えばウィキペディアの信用創造の記述を見ても、法定準備率がマネーストック増の制約になっているという記述が見られる。しかし、現実は法定準備率はマネーストックの量の制約にはならない。(むしろ自己資本比率規制の方がマネーストック量の制約になる。)なぜならば、人為的にマネタリーベースの量を操作する金融政策が行われない限り、マネタリーベースの量は、マネーストックの量に法定準備率をかけた量によって決まるからである。つまり、
多くの経済学者の認識(この点は井上先生も同じと思われる)
マネタリーベースの量→法定準備率→マネーストックの量(上限)実際の関係
マネーストックの量→法定準備率→マネタリーベースの量(但し人為的な操作がない場合)
である。マネタリーベースの量が金融政策によって人為的に増やされる場合には、マネーストックの量に法定準備率をかけても、それ以上のお金が日銀当預口座に積まれてしまい、上記の「実際の関係」は崩れてしまう。ただ、多くの経済学者の認識は上記のような関係にあるという認識なので、マネタリーベースの量を増やしさえすればマネーストックが増えると思い込んでしまったのだろう。だから、黒田総裁の異次元緩和にも関わらずマネーストックが増えないのかという疑問に陥ってしまう。信用創造は預金の設定によって行われる。(この点は、このブログでも従来から指摘してきた通り)
第一の経路:貸し出し
銀行が自らの意思で預金の設定を行う第二の経路:国債の新規発行+政府支出増
銀行の意思に関係なく、政府からの振込によって預金の設定が行われる
という関係にある。井上本でもP.50で
「本章では、ヘリコプターマネーの具体的な実施形態として「政府紙幣」と「財政ファイナンス」(財政政策と金融政策のコンビネーション)を紹介し、それぞれのもたらす効果について論じる。」
と述べているが、正確には、後者は「国債の新規発行+政府支出増」とでもすべきである。新規に発行された国債を日本銀行が買うかどうかは、信用創造が終わった後(ヘリコプターマネーが配布された後)に、銀行のバランスシートにある国債を日銀当座預金に置きかえるかどうかということにすぎないからである。井上先生が本書でこのような整理をされたのは、金融緩和政策を御考えの時に財政拡大政策と組み合わされたからだと私は推測する。正面から国債の新規発行+財政拡大がマネーストックを増やすということを認識されていれば、日銀による国債の引き受けはマネーストックが増えた後の話だと気づかれるはずだからである。そういった意味では、本書は先進性で抜きんでているが、私としては更にもう一歩進んでいただいて、精緻な議論を今後の井上先生に展開していただきたいと希望している。
(2017/06/12 16:47)
追記2「ヘリコプターマネー」政府通貨(政府紙幣)について
著作「ヘリコプターマネー」については現行の政府通貨=コインについての詳しい説明も書かれていません。この点については、私が4年前に書いたブログを参考にしていただければ幸いです。ブログ「政府紙幣を発行するぐらいのであれば正面から国債を発行すればいい理由」
http://d.hatena.ne.jp/NakamuraTetsuji/20120718ヘリコプターマネー作者: 井上智洋出版社/メーカー: 日本経済新聞出版社発売日: 2016/11/25メディア: 単行本(ソフトカバー)この商品を含むブログ (9件) を見る
(2017/06/12 16:47)
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